好きな本

自分が本当に昔から好きで、最近まで折に触れて読んでいる本は2冊。


李陵・山月記 (新潮文庫)

李陵・山月記 (新潮文庫)


ぼく、だいじょうぶだよ―暢君と5年3組のなかま (ポプラ・ノンフィクション)

ぼく、だいじょうぶだよ―暢君と5年3組のなかま (ポプラ・ノンフィクション)


山月記・李陵の方は誰もが国語の教科書で読んだことがあると思われる名作だと思うので、「ぼく、だいじょうぶだよ」について。骨肉腫という骨のガンに冒された小学5年生の上谷暢宏君という子の、クラスの子からの手紙を交えた闘病記です。


本屋さんで県内の子の話としてプッシュされていたこの本は、おばあちゃんにその年の読書感想文推薦図書と一緒に買ってもらいました。その時自分はまだ暢くんより年下でした。ちょっと厚くて難しいかな、とおばあちゃんに言われたけど、絵や写真が随所に入っていたのと、浜松の病院など知っている土地が出てきたため面白そうと思って買ってもらいました。


初めて読み終わったときにはとにかく怖かった。手術しても入院しても助からない骨の病気なんてあるんだ、と愕然としました。骨肉腫は自分の中で破傷風狂犬病に並ぶ恐ろしい病気になりました。そして、「暢くんは全然泣いたり文句を言ったりしなくて偉いなぁ。高学年になればこんなに偉くなれるんだなぁ」と思いました。


今読んでも感想は全く同じです。暢くんは家族にすら心配をかけまいと、泣き言を漏らすことも無くずっと大丈夫、大丈夫と言い続けたそうです。もちろんこの本に書いてある内容が全てではなく、書きたくない事、書けないような事もあったかと思います。それでも、とうとう足を切断する事が決まり、剣道の先生がお見舞いに来たけれども何も言えずただ「どうだ」と聞いたとき、はっきりと「僕は足が一本になっても剣道は続けます」と答え、そして手術の前日、お母さんを「お母さん、ごめんね。せっかくお母さんがちゃんとした体で生んでくれたのに」と気遣う暢くんの精神力は、本当にいつになったら追いつけるのだろう、と途方も無く遠いものに感じます。


暢くんの足の手術は成功しましたが、転移があり、お父さん、お母さんは余命がわずかであることを宣告されます。大きな手術に耐え、足が片方無い以外はほとんど元気で友人とファミコンに夢中になり、ずっと入院治療も続けている、そんな子が、ただ死ぬのを待つしかない。「長く生きられないかもしれないけど、治る可能性もあるんでしょ?」という暢くんの妹さんの質問に答えることができないご両親の無念。この恐ろしい病気に対する無力感は、この本の中で担当医の先生からもつづられています。


元気な頃の暢くんの写真、クラスの子からの便りを見ると、本当にクラスのリーダー、場を盛り上げる存在として活躍していた暢くんの人柄が偲ばれます。この本は、ただ泣いて、感動できるというのではなく、暢くんの本質的な人柄、明るく、社交的で、芯が強く、人を思いやる心から自分の生活を省みる事ができる、わたしにとって一番の名書です。